中核派の現在|動画戦略と区議誕生の裏で公安警察が警戒を強める理由
ヘルメットに角材、立ち込める催涙ガス――昭和の学生運動や数々の過激なテロ・ゲリラ事件で日本社会を揺るがした極左暴力集団「中核派(正式名称:革命的共産主義者同盟政治局/革共同)」。歴史の教科書の中の出来事と思われがちですが、2026年を迎えた現在も組織は解散しておらず、形を変えて活動を続けています。
公式YouTubeチャンネル「前進チャンネル」の開設や現職地方議員の誕生など、表向きは親しみやすいソフト路線へと舵を切ったかのように見える中核派。しかし、その変貌の裏側で、警察庁や警視庁公安部は依然として「極左過激派の中で最も危険な組織」として厳重な監視を続けています。かつての武闘派集団に何が起きているのか、公安関係者への取材や最新の動向をもとにその実態を解明します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:YouTube「前進チャンネル」の配信や杉並区議会議員の当選など、若年層を標的にした「ソフトな大衆化路線」を積極展開している。
- 要点2:江戸川区の要塞化された拠点「前進社」を本拠とし、半世紀ぶりに公に姿を現した最高幹部・清水丈夫議長を中心とした指導体制を敷く。
- 要点3:겉보기の穏健化とは裏腹に「暴力革命」の基本方針は一切放棄しておらず、公安警察は2026年現在も最重要監視対象として警戒を継続している。
【昔と今】中核派の現在とは?過激派のイメージを変えた「大衆化」のリアル

かつての中核派といえば、1970年代から80年代にかけて発生した渋谷暴動事件や成田闘争(三里塚闘争)、さらには火炎瓶や迫撃弾を用いた数々のゲリラ事件など、武力闘争を前面に押し出す組織でした。街頭デモでは白文字で「中核」と書かれたヘルメットを被り、警察の機動隊と衝突を繰り返す姿がお馴染みでした。
しかし、現在の中核派がみせる外見は劇的に変化しています。街頭での激しい暴力行使は影を潜め、代わりに注力しているのがインターネットを活用したメディア戦略と大衆運動です。SNSや動画プラットフォームを通じて「反戦・平和」「労働者の権利向上」「学費値下げ」といった、一般市民や学生が共感しやすいテーマを掲げてアプローチを仕掛けています。
武闘派のイメージを意図的に隠し、若者に馴染みのあるポップなフォーマットで思想を浸透させる手法こそが、現代における中核派の最大の特徴です。
【政界進出の実態】杉並区議会議員・洞口朋子氏の当選と「前進チャンネル」の狙い

中核派の大衆化戦略を象徴するのが、公式YouTube番組「前進チャンネル」の存在です。従来の極左組織が発行してきた難解な機関紙とは対照的に、若手メンバーがユーチューバー風の明るい語り口で日々の活動やニュース解説を配信。動画編集も一般的なエンタメ系動画と遜色ないクオリティで制作され、若い世代のチャンネル登録者を増やしています。
この動画戦略のフロントランナーとして知名度を高めたのが、杉並区議会議員・洞口朋子(ほらぐち ともこ)氏です。法政大学在学中から中核派系全学連の活動に身を投じ、前進チャンネルのメインパーソナリティとして発信を続けた後、2019年の東京都杉並区議選で初当選。2023年の統一地方選でも再選を果たしました。
地方議会に拠点を持つことで、組織は「公職を持つ正当な政治勢力」という看板を手に入れました。親しみやすい若手女性議員のキャラクターを前面に押し出すことで、過激派特有の排他性を薄め、一般層への浸透を図る高度なイメージ戦略が機能しています。
【組織の内幕】江戸川区の拠点「前進社」と最高幹部・清水丈夫

ソフトな情報発信の一方で、組織の内部構造は依然として厳重な秘密主義に包まれています。中核派の中枢拠点となっているのが、東京都江戸川区松江に位置する本部ビル「前進社」です。
地上8階・地下1階建てのビルは、外部からの襲撃や家宅捜索を防ぐため分厚い鉄扉や多数の防犯カメラ、金網で厳重に要塞化されています。内部では活動家たちが集団生活を送り、印刷設備を備えて機関紙『前進』の発行を継続しています。
2020年9月には、約51年間にわたり地下潜伏を続けていた最高指導者・清水丈夫議長が約半世紀ぶりに公の集会に姿を現し、公安当局に大きな衝撃を与えました。高齢化した指導部が表舞台に再登場した背景には、若返りを進める組織の求心力を再統合し、党内規律を引き締める思惑があったと分析されています。
なお、組織を支える資金源は、機関紙『前進』の定期購読料や支持者からのカンパ、傘下労働組合の組合費、さらには専従活動家や地方議員の報酬上納などから成り立っており、強固な財政基盤を維持しています。
【歴史と対立】中核派と革マル派の違いとは?血塗られた内ゲバ事件の歴史
日本の新左翼運動を理解する上で避けて通れないのが、「中核派」と「革マル派(革命的マルクス主義派)」の対立です。両者はもともと1957年に結成された「革命的共産主義者同盟(革共同)」という一つの組織でしたが、路線対立から1963年に分裂しました。
両派の主な相違点は、革命に対するアプローチと戦術にあります。
- 中核派(武闘派・大衆蜂起志向):街頭での直接行動や武装闘争を辞さず、国家権力との全面対決を主張する路線。
- 革マル派(理論派・組織潜透志向):党組織の温存と理論構築を重視し、鉄道や自治体などの既存労働組合への潜入・浸透を図る路線。
分裂以降、両派は「内ゲバ」と呼ばれる熾烈な殺し合いを展開しました。1970年代から80年代にかけて白昼の路上やキャンパス内で鉄パイプやバールを用いた襲撃が繰り返され、双方で100人以上の死者、数千人の重軽傷者を出す凄惨な歴史を残しています。現在では直接的な物理衝突は沈静化しているものの、思想的断絶は現在も修復されていません。
【2026年最新動向】公安警察が現在も「危険性」を警戒し続ける決定的な理由
YouTubeでの軽快なトークや議会活動を見ていると「すでに無害な政治団体になったのではないか」と錯覚しがちです。しかし、警察庁の『警察白書』において、中核派は2026年の今も「極左暴力集団」として厳重な監視対象に指定されています。
公安当局が警戒を解かない理由は明確です。中核派はこれまでに一度も「暴力革命による国家体制の転覆」という基本綱領を撤回していません。大衆向けの「公然部隊」の背後には、身分を隠して地下活動に従事する非公然部隊(人民革命軍)が依然として温存されています。
また、京都大学や法政大学などの大学キャンパスにおいては、中核派系の全学連(全日本学生自治会総連合)が学生運動の再編を狙って活動を続けています。SNSや動画で関心を持った若者を徐々に思想学習会やデモへ誘導し、将来的な専従活動家としてオルグ(勧誘)する育成システムは今も健在です。
表層の穏やかなアピールとは裏腹に、組織の根底にある過激なイデオロギーは変わっておらず、治安当局は「潜在的なテロ・ゲリラの脅威」として注視を続けています。
【中核派の現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中核派の構成員は現在どれくらい存在しますか?
A1:警察当局の推定によると、中核派の勢力は約4,000人規模とされています。構成員の高齢化が進む一方で、SNSやYouTubeを通じて獲得した10代・20代の若手メンバーが一定数加入しており、組織の存続を図っています。
Q2:過激派としてマークされているのに、なぜ選挙に出馬できるのですか?
A2:日本国憲法が保障する「思想・信条の自由」および「被選挙権」に基づき、犯罪行為で公民権を停止されていない限り、どのような政治的主張を持つ人物でも法的に選挙へ立候補することが可能です。そのため、無所属や政治団体名義で地方議会へ進出しています。
Q3:一般人が「前進チャンネル」を視聴したりイベントに参加したりすると危険ですか?
A3:動画を視聴すること自体に法的な問題はありません。ただし、オフラインの学習会やデモ参加をきっかけに素性を特定され、組織内への勧誘対象としてアプローチを受ける事例が報告されています。背後にある組織の歴史や本来の目的を十分に理解した上で、慎重に距離を保つ必要があります。
まとめ:見た目の変化に惑わされない客観的な視点を
2026年現在の中核派は、YouTubeや地方議会を活用した巧みな広報戦略により、かつての「暴力的で危険」というイメージを大幅に塗り替えることに成功しつつあります。日常的なトーンで語られる反戦や社会保障の議論は、一見すると一般的な市民運動と区別がつきません。
しかし、組織の歴史と本質を掘り下げれば、彼らが掲げる最終目標が資本主義社会の解体と革命である事実に変わりはありません。情報が溢れるデジタル社会だからこそ、発信される親しみやすいコンテンツの裏にある本質と公安当局の警戒理由を、客観的なファクトに基づいて見極める冷静な姿勢が求められています。 (出典: 中核 派 現在(Yahoo!ニュース))